マンション管理において、ゴミステーションの管理は美観や衛生面だけでなく、防犯の要でもあります。最近、私の担当するマンションでは外部からの不法投棄が相次ぎ、管理組合を挙げて厳重な対策を講じてきました。
しかし、その先に待っていたのは、解決の喜びではなく「現代の集合住宅が抱える切実な問題」でした。
不法投棄対策の末に判明した、ある居住者の影

外部からの持ち込みを阻止するため、私たちは以下の対策を実施しました。
- ゴミステーション入口のドアを常時施錠
- 防犯カメラの記録を徹底的に確認
- 警察と連携し、不審者への警戒を強化
- 理事会メンバーによる見回りの頻度をアップ
そんな中、先日またもや「不審なゴミ」が確認されました。
「今度こそ犯人を特定し、厳重に注意しよう」と、理事長と共に防犯カメラを凝視したところ、画面に映っていたのは……外部の人間ではなく、当マンションに一人で暮らすおばあちゃんでした。
以前から少し認知症が進んでいるのではないかとご家族と協議をしていた方ですが、夜間に人目を忍ぶようにゴミを持ち込む姿が記録されていたのです。
本人との対話で見えた「認識のズレ」と認知症の現実

判明後、すぐにご本人とご家族を呼び、ミーティングを行いました。私は管理人として、夜間のゴミ出しがいかに危険かを、以下のリスクを挙げて説明しました。
- 防犯上のリスク:実際に外部からの不法投棄がある中、夜間に犯人と鉢合わせする危険がある。
- 自身の安全:鍵を忘れてオートロックに入れなくなったり、帰り道がわからなくなり路頭に迷う可能性がある。
- 社会的影響:警察に保護された場合、身元引受人がいないと帰宅できない。
しかし、おばあちゃんの反応は意外なものでした。
「悪いやつが増えて怖いですね」「鍵をかけるなど、もっと対策をしてください」
まるで他人事のように、外部の「悪いやつ」の話として受け取っているのです。
自分の身に起きている危険や、自分がルールを破っているという自覚がありません。これが認知症の「認識のズレ」というものかと、現場でその難しさを痛感しました。
管理組合が突きつけた、共同生活を維持するための「決断」

家族側も、毎朝の安否確認電話やスケジュールの共有など、できる限りのことはしているようです。しかし、本人は「わかっている!」と面倒くさそうに返事をするばかりで、実態が伴っていません。
ここで、理事長は毅然とした態度で家族に伝えました。
「管理組合としては、ご家庭の事情にまで踏み込んだ指導はできません。しかし、共同生活を送る以上、ルールと安全は守られなければなりません。家族の支援やヘルパーの活用を含め、ここで共同生活が継続できるのかどうか、ご家族で真剣に協議し、判断してください」
これは突き放しているのではなく、管理組合として負える責任の限界を示した言葉でした。
管理人・家族・管理組合。それぞれの立場から考える最善の着地点

ゴミ出しの日、私は必ず管理人室から確認するようにしています。お一人様なので量は多くありませんが、気になるのは「衛生面」です。
数日分をまとめて出すということは、室内にゴミを溜め込んでいるということです。私は家族に、「少量でも回収日には必ず出すように指導してください」と伝えました。
本人が自覚できない以上、対策には限界があります。
家族は「本人の意思(施設や同居の拒否)」を尊重していると言いますが、そのしわ寄せが管理組合や現場の管理人に来ているのは事実です。
「マンションでなんとか世話をしてほしい」という家族の甘えと、管理の限界。
この問題は、今後さらに増えていくでしょう。私たちは、善意やボランティアではなく、あくまで「管理」の範疇で何ができるのか、常に問い続けなければなりません。